【OB企画】鈴木崇弘ドクター インタビュー
「医師として、もう一度グランパスと向き合える喜び」
鈴木 崇弘(西尾市民病院 整形外科医)
2008シーズンまで名古屋グランパスアカデミーに在籍
名古屋グランパスアカデミーで育ち、現在は整形外科医として活躍する鈴木崇弘さん。プロサッカー選手を目指して過ごしたアカデミー時代の記憶、医師としてのキャリア選択、そして今なおサッカーと向き合う想い──。クラブOBとして、再び会場ドクターとしてグランパスに関わる彼の言葉には、次世代の選手たちへのエールが込められています。

― まずは自己紹介をお願いします。
愛知県西尾市出身で、西尾高校を卒業後、浪人を経て愛知医科大学医学部に進学しました。現在は西尾市民病院で整形外科医として、主に外傷や人工関節の手術、外来診療を担当しています。
昨年度より、名古屋グランパスU-18のプレミアリーグにおいて会場ドクターとして携わらせていただいています。会場ドクターではチームドクターと違い、両チームの選手やスタッフ、観客など、試合会場すべての方々の救急対応を担っています。
― アカデミー時代のことを教えてください。
小学3年生から高校3年生までグランパスのアカデミーに所属し、フォワードやサイドハーフとしてプレーしていました。ドリブルや左足からのクロス、シュートには自信がありました(笑)。
特に印象に残っているのは、高校3年時の高円宮杯決勝で浦和に大敗したこと。出場は叶いませんでしたが、とても悔しく、今でも鮮明に覚えています。それでも3年連続でベスト4に進出できたのは、周囲の支えがあってこそ。素晴らしい経験でした。
昨年から会場ドクターとして現場に戻り、森川コーチや瀧トレーナーと再会できたことも嬉しかったです。学生時代はたくさんご迷惑をおかけしたと思いますが、プレー以外にも生活面やメンタル面まで指導していただいたことに今でも感謝しています。アカデミーで学んだ礼儀や姿勢は、今の自分の支えになっています。
― 医師を志したきっかけは何だったのでしょうか?
高校3年の夏、怪我をきっかけに医師を目指す決意をしました。プロを目指していた気持ちは強く、大学進学後に再挑戦しようとも考えていましたが、自信を失っていた部分もあり、「もしサッカーがダメだったら…」と将来を考えるようになりました。
そんなとき、自分のように怪我で苦しむ選手を支える立場になりたいと思い、医師という新たな目標を持ちました。決して簡単な決断ではありませんでしたが、両親も応援してくれたことに感謝しています。
もちろん、サッカーを諦めたことに後悔がないと言えば嘘になります。同期には現役で活躍している選手もおり、羨ましく思うこともあります。ただ、それだけサッカーに打ち込んできたからこそ、「絶対に医師になる」という強い覚悟を持てたのも事実です。
別のかたちではありますが、サッカーやアカデミーに携われていることはとてもやりがいがあり、幸せな時間です。
― 会場ドクターとしての役割と想いを教えてください。
会場ドクターは、試合会場における選手、スタッフ、観客すべての健康管理と救急対応を担います。選手の気持ちに寄り添いながら、医学的に最善の判断をするという緊張感のある仕事です。
特に選手に対しては、治療方針や復帰の見通しを丁寧に説明し、一緒に最良の選択をしていくことが大切です。メンタル面のサポートも重要だと考えており、自身の経験を活かして選手に寄り添いたいと考えています。
― 最後に、アカデミーの選手たちへのメッセージをお願いします。
再びグランパスと関われていることに感謝しています。選手たちは素晴らしいプレーを見せてくれますし、皆さんが高い目標を持って毎日を大切に過ごしている姿は本当に尊敬しています。
グランパスアカデミーという素晴らしい環境でサッカーができることに感謝しながら、支えてくれている家族やスタッフへの気持ちも大切にしてください。そして、同期や先輩後輩とのつながりを大事にしてもらえたら嬉しいです。
プロを目指す選手も、進路に迷っている選手も、それぞれが悩みを抱えていると思います。でも、アカデミーで過ごした日々はきっと人生の力になります。自信を持って進んでください。
僕自身も、選手たちに負けないように、立派なスポーツドクターになれるよう努力を続けていきたいと思います。

どんな道を選んでも、アカデミーで過ごした日々は必ず自分の力になる、という鈴木さんのメッセージは、未来を目指す選手たちの背中をそっと押してくれるはずです。