🏔️INSIDE SHINJO🏔️Vol.2 小野俊輔 / SHUNSUKE ONO

「この経験が、必ず自分を変える」
静かに、しかし確実に、その若者は覚醒の一歩を踏み出している。 20歳。J2、大分トリニータからの期限付き移籍。 今季、富山新庄クラブで副キャプテンを務める小野俊輔は、天皇杯という全国の舞台で、再び “J” と向き合った。
舞台は新日本ガス球技メドウ。 相手は J3 ・ FC 岐阜。カテゴリーの壁を越えてぶつかる一戦に、彼は迷わず全身で飛び込んだ。
「自分の名前を売るチャンスでもあるし、チームの名を全国に知らしめるチャンスだと思っていた」
ピッチに立つその眼差しは、勝利だけを見据えていた。 2024 年 6月12日──ちょうど 1 年前の天皇杯。 大分トリニータの一員として挑んだ鹿児島ユナイテッド FC戦は、己の力を試す “個” の勝負だった。
あれから 1 年。
舞台も、立場も、そして彼の覚悟も変わった。 富山新庄クラブの副キャプテンとして挑む今大会。 “チームを引っ張る” 覚悟を背負っていた。
 
 
 
「J クラブ」 と真っ向勝負──手応えと課題の間で
 
小野の持ち味は、後方からのビルドアップと縦への展開力。 この試合でも、その武器を惜しみなく発揮した。 「奪ったボールを効果的に前につなげることは、ある程度できた。 ただ、細かい部分。セットプレーの守備やちょっとしたスキを突かれたシーンは、まだまだ詰めなきゃいけない」
その言葉には悔しさも滲むが、それ以上に “次” を見据える冷静さが宿っていた。 岐阜との一戦は、彼にとって二度目の J クラブとの対戦。 大分在籍時にも天皇杯の舞台は経験していたが、今回は副キャプテンとしてチームを 牽引する立場。
緊張感の質も、背負うものも、大きく変わっていた。
 
 
「チームを勝たせる選手になる」──副キャプテンの矜持
新天地・富山での挑戦は、サッカー面だけにとどまらない。
初めての一人暮らし。初めての県外生活。 全てが “初めて” 尽くしの環境で、彼は副キャプテンに任命された。
「年上の選手ばかりだけど、練習中に軽いプレーをした選手がいたら、ちゃんと伝えるようにしている」
若さに甘えず、立場に甘えず。 その姿勢は練習への取り組み方にも表れている。 誰よりも早く練習場所に入り、自主的にトレーニングを行い通常の練習に入る。 言葉とプレーでチームを導くことを、小野俊輔は “自分の仕事” として引き受けている。
 
 
福井との決戦前夜──見据える先に「J」の文字
前期最終戦。 北信越フットボールリーグは、今まさに最大の山場を迎えている。 待ち構えるのは、首位を争う福井ユナイテッドFC。 この直接対決を制するか否かが、今シーズンの行方を大きく左右する。
「前期全勝で終えて、後期につなげたい。そのためにも、日頃の練習からもっと突き 詰めていきたい」
 
「JFL 昇格。それが自分の今の最大の目標。その先に、大分での試合出場がある」 明確なビジョンを口にするその言葉に、迷いはない。 その目には、すでに “プロとしての責任” を宿している。
 
 
「この経験が、自分を変える」 ──そして再び、 Jの舞台へ
「副キャプテンという立場を通じて、自分だけでなく “チームを「観る」力” が養われている。これは、どんな道に進んでも活きる経験になる」
大分への帰還。その先にある J の舞台。
描く未来図の実現に向け、彼はいま、一歩一歩を着実に積み重ねている。 静かなる野心を胸に。 声を張り、球際に飛び込み、縦パスを通す。 そのひとつひとつが、未来の自分を形作っていく。 「このチームで、 JFLに昇格する。それが今の自分の全てです」 岐阜との 90 分の戦いを終え、さらなる高みを目指したその挑戦は続いていく。