安田秀一シニアアドバイザーコラム"Orange be ambitious"
その1
アメフトで勝ち、人生で勝つ。
「自由と進歩のフットボール」とは
人生で勝つ方法を学ぶこと。
■イメージして、毎日を積み重ねる
「自分のスケールを大きくする」
学生時代の4年間、どう生きるのか?
その答えはこの一点に尽きるでしょう。
自由を追求することで、自分に秘められた大きな可能性を掘り出し、最大化する。チームへの貢献を通じて社会との関わりを学び、より大きな自分へと成長する。
それが「自由と進歩のフットボール」の根幹であり、大切なのはイメージすることです。
2025年の12月、どんなスーパープレイを見せられるか。
後輩から真に尊敬されているか。
どれだけカッコいい自分になっているか。
どれくらいカッコいいチームが作れているか。
そして
40歳の時、どんな人間になっていたいか。
年収はいくらで、
どこに住んで、
どんな車に乗っていて、
誰と結婚していて、
どんな家族を作っているか。
自分の子供から尊敬されているか。
これらを実現するべく、毎日を積み重ねていく。そんな日々を送っているうちに、将来の自分への期待がむくむくと湧き上がってくることでしょう。
皆さんの未来は、今日過ごした一日の延長でしかありません。自由を追求し、積極果敢に挑戦する。例えうまくいかなくても、全てを糧(かて)としてポジティブに捉え、上を向き、胸を張って、次のチャンスに挑む。
その積み重ねが「自分のスケールを大きくする」ことにつながります。法政フットボールで過ごす一日を使って、自分のスケールを大きくすることを目指してほしいと思います。
■アメフトの大事な知的要素は「国語と算数」
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僕は現役の時、アメフトを「人生のリトマス試験紙」と定義していました。
「早慶、東大など他校に完勝/圧勝することで、人生でも勝者となることができる。なぜなら、アメフトとは戦略的なスポーツ。他のスポーツよりも知的要素が与える影響が強い。だからこそ、完勝/圧勝することに意味がある」
そう考えて一つ一つを追求し、成果を確認できる日々を楽しみ、自分やチームの成長を実感し、楽しくて仕方ない4年間を過ごすことができました。
アメフトとは、学校での勉強を実践、実験する場所でもあります。それこそ「国語と算数」は、アメフトにおける大事な知的要素です。
チームビルディングにおいてまず大切となるのは「ストーリー作り」。オフェンス、ディフェンス、スペシャルチーム。すべてにおいて「どんなフットボールがしたいんだ?」というストーリーを作っていきます。スタッフなら「どんなチームにしたいのか?」でしょう。
ここで求められるのは「国語」です。
皆さんも小学生のころ、たくさんの作文を書かされたことと思います。当時は先生に言われるがままに原稿用紙に文字を埋めていっただけかもしれないけれど、本来そこにあるのは、自由自在の創造の世界。作文とは、自分の思い描くストーリーを書くべきところです。そして、「算数」を用いて、その創造の世界を現実に落とし込んでいきます。
自由に創造し、書き綴る作文。その目的は、より多くの人々に「面白い」と思ってもらうことです。ただし長くてもダメ、短すぎてもダメ。「〇枚以上」などというルールの中に、起承転結を美しく挿入する必要があります。X(Twitter)でも文字数が決まっているように、正確に数字を合わせながら「面白く」仕上げねばなりません。アメフトでいうなら「人数合わせ」と「ゲームマネジメント」。ここを突き詰められなければ、永久に勝つことはできません。
僕が日本のアメフトを約40年間見てきた中で、チームが勝てないほとんどの要因は、この「国語と算数」にあります。
そもそも、どんなフットボールがやりたいのか。そのストーリーが見えず、毎年コロコロと変わったりもする。モーション、シフト、ワイルドキャット、バンチ、エンプティ、アンダーセンター…NFLや米国カレッジのように体型ばかりたくさんあるけれど、人数が合わずに自滅する。出るも止まるもじゃんけんポン、勝つも偶然、負けるも偶然…。
そんなフットボールでは勝つことはもちろん、本来フットボールから学べるはずのたくさんのことも学べないまま、4年間が終わってしまいます。
自分の心を解き放し
自分らしい生き様と
描きたいストーリーを
適切な文字数で文脈を構成し
相手の心を支配する。
全ての事象をポジティブに捉え、
積極果敢な選択により
難局を乗り越えるフットボール。
12分Qなら60プレイ。
15分Qなら80プレイ。
1回のドライブを10回前後、
ラン200yds、パス200yds以上。
1回のラッシュを3.3yds以内、
14点以上を与えない。
相手をフィジカルにサイコロジカルに
完全に支配する。
国語を用いてストーリーを描いた上で、算数を用いて目指すべき数字を明確にする。その積み重ねが自分のスケールを大きくし、「自由と進歩のフットボール」の実現へとつながっていきます。
「試合で勝つことは目標でも、目的でもない。勝利とは、自分のスケールを大きくするため、人生で勝つための一つの手段にすぎない」
取り立てて、何かを変える必要なんか何一つありません。今日一日、思いっきり「自由と進歩のフットボール」をエンジョイする。その結果、いつに間にか、人生を勝ち抜けるたくましい自分を手に入れているはずです。
(終わり)